第2話

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次の日、激しい雨だった。 5時36分発、始発列車。 台風の影響らしく雨が強い。さいわい風が弱いらしく定刻通りに出発した。 6時08分、君の駅に着いた。 運転を見合わせるため、しばらく停車するらしい。 だけど、君の姿はそこになかった。 「来ないか…」 入り口の扉から窓に目をやろうとした。 するといつの間にか彼女は僕の前の席に座っていた。 「驚いた?」 彼女は驚いた僕の顔を見て、少し笑っていた。 「驚くよ。」 少し声が強張った。さすがに心臓がバクバクしていた。 「ごめんね。幽霊だから、わざわざ入り口から入らなくても大丈夫なの。」 「そうなんだ…」 その言葉とその行為に、彼女が本当に幽霊であるって実感した。 真面目な顔をした僕を見て、彼女は少し反省したようにうつむいた。 「雨ずっとやまないね。このままやまないといいのにね。」 そう言うと彼女は窓の外を見た。 気まずくなった僕は何か発しようとした。 「あのさ…、おはよう。」 思わず出た言葉だった。 「おはよう。」 彼女は満面の笑みで答えた。 その顔を見て嬉しくなった。 それと同時に恥ずかしくなって窓の外を見ているふりをした。 雨が続く。 風も少しでてきたようだ。 駅員が慌ただしく車内を歩いている。 「聞いて欲しい話って?」 僕は話を切り出した。 彼女は窓の外を見つめたままだった。 「もう少しだけ、こうしてていい?」 悲しげな表情だった。 「うん。」 同じように窓の外を見つめた。 雨は降り続く。
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