プロローグ

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本来の僕なら話し掛けずに、素通りしていたと思う。 けれど、僕は気持ち悪いと思いつつも、その子に話し掛けていた。 「なぁ、何してんのここで?」 怖い物見たさなのか、自暴自棄なのか分からないけど、この時の僕は精神的に可笑しかったと思う。 夜空の下。雨など降っていないのに何故か、彼女と彼女の周りだけ濡れていた。 ポタポタと彼女の袖口から雨粒が地面に落ちて、その部分は小さな水溜りになっている。 いったい、いつからいるんだこの子? 確か昨日の夕方に一度、通り雨が降った気がするが…… 僕は彼女のすぐ隣まで来て見下す。 けれど、彼女は俯いた間々目線を合わせようとしない。 しっかりと両手で鎖を握り、僕を警戒しているようにも見える。 けれど、彼女は俯いた間々、どこかふわふわとした口調で、僕にこう答えた。 「突然でしたので、驚きました……こんばんは、お兄ちゃん。今宵は月が綺麗ですね。」 何故だろう不思議だ。 警戒してる割に彼女はどこか楽しそうだった。
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