さよならマーメイド

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目が回るほどに広く、一面、どこを見回しても本ばかり。 琥珀色の光があふれる室内。 茶色の本棚は色とりどりの背表紙が綺麗だ。 古い木のような本の匂いが、どこか落ち着くアロマのように漂っていた。 人々は各々に、ゆっくりとした時間を楽しんでいる。 ひっそりとした行動音しかしない、穏やかな空間だ。 そんな館内の奥の、更に奥。 館員達でさえ知らない、扉があった。 扉の向こう。 中には見上げるほどの鏡がひとつだけ置いてある。 縁は立派な装飾で縁取られ、不思議な光沢で虹色に輝いていた。 鏡は秘密の入り口だ。 この中にはもう一つの空間が広がっているのだった。 そこは、“裏図書館・レーヴ”と呼ばれる場所。 本の世界を、この世界を守る者達、御伽衛勇士(オトギエイユウシ)がいる場所だった。 .
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