さよならマーメイド

8/92
前へ
/92ページ
次へ
その青年の姿に、思わずルーチェの顔が引きつる。 「イルシオン先輩…」 出口を塞がれたかたちに立たれ、仕方なく正面で立ち止まる。 彼の名前は、イルシオン=オーラン。 ルーチェの教育係である。 御伽衛勇士の中でも、かなり有能として知られている人物だ。 頭の上で結ばれている髪は、光る銀。 青色で切れ長の瞳、均整の取れた、完璧とも言える顔立ちの美青年であることでも有名だ。 「先ほどまで、疲れた、もう無理だと言っていたはずが、ずいぶん元気になったようだな?」 「えーっと、これは、そう、ほら…空元気ってやつですよぉ」 ルーチェが、あはは。と笑って誤魔化すが、イルシオンは全く淡々とした表情を崩さない。 ルーチェは心の中で思い切り舌打ちをした。 女子ならこんな先輩から直々に指導されることは、憧れなのかもしれないが、どうにもイルシオンとは馬が合わないのだ。 .
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加