第1章

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神様は、誰に対しても公平で、特に入れ込むことも無く、人々を導く。 私は、そんな独り言を呟く。すれ違った人が、ビクッとして振り返るが気にしない。そんなものは、この世では小さな事だから。 都会とも、田舎ともとれない地味な街。それが私の住む夕日町。海に面し、その海に沈む夕日が綺麗なこと以外取り柄のない、ちっぽけな街。 その街の繁華街を、私は歩いていた。齢17の少女が繁華街なんぞに足を運ぶのは、大半の場合ショッピングや友達との遊びであろう。 だが、今日の私は少しばかりおかしな事に巻き込まれているのだ。ウキウキ気分のお出かけでは断じてない。できることなら、今すぐ帰りたい。 そんな愚痴を考えていると、上着のポケットが振動した。正確には、買ったばかりの携帯だ。 携帯を取りだし画面を見る。通話着信。初期設定の高い音が、なんだか私の癇に障る。 「もしもし?」 画面の通話に触れ、携帯を耳に当てる。生まれて初めてとなる通話の相手は、あまり喜ばしくない人物であった。 『私だ。その携帯は気に入ってもらえたかな?』 女の声。電話の向こうの相手は、少しばかり嬉しそうにしている。私の通話処女をこいつに取られたのかと思うと悲しくなる。 「んー、まあまあ。で?何の用なの?もう少しであんたが言った廃ビルなんだけど」 イライラをそのままぶつけてみる。女はまったく気にしない事を知っているが、少しだけ抗った。 『ははっ、まあそうイラつくなよ。それで、用件だが。集合場所を変更したい。少しばかり、予定が狂ってな』 「は?どういうこと?もう着くんだけど」 余裕を醸し出す割りに、予定が狂ったなんて言い出す女にストレスが溜まる。そもそも、人を呼び出しておいて、場所の変更とはどういうつもりだ。 『なに、繁華街から少し外れに変更するだけだ。そう時間は……ちっ、もう来たのか』 女から一瞬だが、余裕が消えた。もうすでに目と鼻の先には廃ビルだ。 「来たって、誰がよ。私はもうすぐだけど」 『君ではない。《あいつら》だよ』 女がそう言った瞬間、廃ビル二階の窓が割れ、中から人が飛び出してきた。 見覚えのある、1つに纏めた長い茶髪の髪。サイズの大きいコートを羽織った、細身で背丈の高い女。 「えっ?」 呆気に取られた私。その後、女を追うように、窓から炎が吹き出した。
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