第1章

2/32
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
駅のホームへと向かう階段を降り、地下道を歩きながら、ポケットから携帯電話を取り出した。 午後の五時前だった。 話しがあると急に俺を呼びだした由梨絵との約束には、まだ、時間があった。 この時間にタトゥーショップを出るとは思わなかった。 約束の時間の一時間前の六時に切り上げるつもりだったが、斎藤さんの話しをこれ以上は聞きたくなかったのだ。 携帯をジーンズのポケットに戻し、恩あるタトゥーショップを飛び出したことに深く反省し、大きくため息をついた。 三十分ほど前、客が居なくなったのを見計らい、斎藤さんに仕事の終了時間を告げると、怪訝な顔を浮かべ彼女と約束があるのかと尋ねてきた。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!