1. 全ての始まりへと

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潤んだ瞳で見上げられても、心は何一つ動くことなく。 自分のどの顔が、どの表情が、相手の心を捉えるのか。 全て計算ずくで、演出された姿。 次に自分が発する言葉によって、目の前の女が、どんな反応をするかも想像がつく。 それでも、静かなひと時を取り戻したくて。 口を開きかけたとき。 一人の男が、教室に入ってきた。 「おっとぉ、もてるねぇ。  どうせまた、断ったんだろ?もったいない。  何なら、おれと付き合うかい?」 冗談なのか、本気なのか、真面目くさった顔をして、女の反応を窺う。 顔を真っ赤にした、名前も知らない女は、パタパタと走り去っていった。
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