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潤んだ瞳で見上げられても、心は何一つ動くことなく。
自分のどの顔が、どの表情が、相手の心を捉えるのか。
全て計算ずくで、演出された姿。
次に自分が発する言葉によって、目の前の女が、どんな反応をするかも想像がつく。
それでも、静かなひと時を取り戻したくて。
口を開きかけたとき。
一人の男が、教室に入ってきた。
「おっとぉ、もてるねぇ。
どうせまた、断ったんだろ?もったいない。
何なら、おれと付き合うかい?」
冗談なのか、本気なのか、真面目くさった顔をして、女の反応を窺う。
顔を真っ赤にした、名前も知らない女は、パタパタと走り去っていった。
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