江南団地と白い車

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この幼稚園の送迎バスは、2台のバスで5つのルートを回る。 そしてその担当はバス毎に決められていて、登園バスと降園バスでも担当者が別れていた。 「笑美先生、今日は赤バスに乗るの?」 「僕の隣に座っていいよ。」 「違う、私の隣だよ!」 担当するクラスの園児たちは、担任である私が同じバスに乗る事を喜び少し尾立っている。 バスに乗り込んでは下級生に意地悪をしたり、同じ年長児同士でケンカを始めたりと、今日の子どもたちはいつもより落ち着きがなかった。 「そろそろバスが出発するから。 お友達と譲り合ってバスに乗ってちょうだい。」 そう声を掛けながら、私はバスの通路の前方に立った。 ここからはバスの中全体が見渡せる。 南ルートのバスに乗車した園児の人数を数え、私は運転手に「出発OKです」と声を掛けた。 「よぅし、出発進行~!」
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