嘔吐

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青、赤、水色、桃色、黄、紫。今まで吐き出した嘔吐物は、全て意味があったの。 吐き出さなければ伝えれないこと、閉じ込めなければ伝わらないこと、それを私達は知ってた。 何も感じない透明な言葉をあなたは吐き出し、友達じゃないと無理な明るい黄色の言葉を私は吐き出し、そしてこの関係は成り立った。 それからというもの、激情の赤、悲しみの青、落ち着きの水色、幸せな桃色の言葉を互いに形にし、時には嫉妬したりして紫色の嘔吐物だって見えた。 冷たい瞳が、今では違った瞳だね。 それが嬉しかったんだ。 何度も何度も、愛を形にして。 何度も何度も、向き合って泣いて。 そうしてるうちに、私達は互いがそこにいることが当たり前なんだって認識しだした。 ああ、これが私達を囲む色か。 怖いほど、綺麗な深い青。 まだ褪せることはなさそうだ。 明日を知らない目は明日を夢見る目に変わり、その足は一人一人の歩速に合わせて歩むことを覚えた。 もう、大丈夫かな。 私はあなたからそっと離れ、正面立った。 「初めまして。」 痛いほど優しい世界だ。 私が吐き出したものは、感情を彩るたくさんの色でした。 あなたが持っていたものは、皆で作った愛の色でした。
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