ロストワン

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「「「…………」」」 三人の視線が困惑に歪む。ある程度、予想できていたことだけに私はさらに続けて言う。 「もちろん。最悪の手段ってことでよ。ここにある食糧を効率よく消費していけば死体を食べなくてすむ。だから、自覚のないようなら言っておくわ。私達は閉じ込められた。ここからは一心同体、身勝手な行動はしないことね」 と言う。三人は何か考えているようだが、口を開かない。閉じこめられたという実感がちゃんと意識できたようだ。変な期待をしているだけ無駄だ。確実にやれることをやらなければならない。ここに長居するつもりはないので、スタスタと校舎に向かって歩く。 ポケットにこっそり隠した手紙の一文を思い返し、振り返りながら、 「アインズヴァッハの門に気をつけましょうね」 と、意味もなく言った。 と、もう一度、食堂に集まり、話し合いの場が設けられた。今回は生徒は全員、揃っていた。最初はわかったことを報告を行い、これからやることの役割分担となった。やるべきことは分けて、三つ、食糧確認、死体処理、武器の確保だ。この建物は内側から鍵が破壊されていた、なら、首なし死体〔北見?〕を殺害した犯人もこの建物の潜んでいることになる。もしくは、ここにいる誰か。 「じゃあ、ここから役割分担となりますが、まず、死体処理を」 と、議長をつとめる、山城が言う。死体という言葉に、神田の表情がわかりやすく青ざめていく。 「加藤がやればいいんじゃない? そーいうことやりたいんでしょ? だったら、適任じゃない」 と、嫌みたっぷりに矢島が発言する。 「そうね。そうさせてもらうわ。ただ、私、一人じゃ大変だから、もう一人くらい居てくれないといけないんだけど? 矢島さん、やらない?」 嫌みを嫌みで返す。神田ほどじゃないにしろ、死体処理を嫌がっていることは確かだ。私にこんな嗜虐心があったなんて驚きだ。思わずほくそ笑んでしまいそうになる顔を必死に引き締める。コトッと音がして、湯川がそっと手を上げていた。 「…………発言、よろしいでしょうか?」 「わざわざ確認しなくていいよ。湯川さん。話し合いなんだしさ。どんどん発言しちゃってよ」 と、雰囲気を払拭するように、鍋島が明るい口調で言った。 「…………死体処理。私がお手伝いしてもいいでしょうか。教室もお掃除しなければいけませんし。皆さんが授業を受ける場所ですから」
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