ロストワン

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「なにそれ。まるで今まで通りに授業を受けるみたいじゃない」 もう、お約束通りに矢島がくってかかる。いちいち文句をつけないと気がすまないんだろうか? 「そうですけど。それがどうかしたんですか? 教室はちゃんと清掃すれば使えますよ。私はお掃除大好きですから問題なしです」 いつもの亡霊のような雰囲気より、ムンッと任せてくださいと言わんばかりに鼻息をもらす、湯川。 「そーいう問題じゃないわよ。私達は閉じこめられたの!! すぐにここから出て行かないとマズいってわかんないわけ!?」 落ち着いてと、鍋島がフォローするがうっとうしく振り払われるだけだ。事態は刻一刻と悪くなっていく。もしも、この中に殺人犯がいるとするならそれが目的なんだろうか? 身内同士による殺し合いを強要するのが、 「静粛に!! とにかく、役割を決めていきましょう!!」 山城の一声で、会議は再開され、私と湯川はいち早く、教室の清掃、死体の処理にとりかかった。殺害現場は今朝、見た場合となんら変わらなかった。死体はそこにあったし、血生臭さもそのままだ。 「とにかく、死体を小分けにして袋に入れましょうか。梃子の原理を使えばそんなに労力を使わずに切断できるって聞いたことがあったわ」 もちろん、確証があるわけじゃないけれど、鋸なんかでギコギコと切断するより楽だろうという判断だった。 「あの、死体は大きな袋に入れておけばいいんでしょうか? わざわざ切断することなんて」 「何を言ってるの? あとあと食べるなら最初から小分けにしておいたほうが調理するときに楽じゃないの。冷凍してしまう前に小分けしたほうがあとあとの面倒も減るでしょ? って、このことは言ってなかったけ?」 湯川は、私の提案に対して、とくに嫌悪感を示すことはなかった。単純に鈍いだけかもしれないけれど、 「どうして、食べる必要があるんです?」 「緊急事態に備えてって答えさせてはもらうけど」 「大丈夫だと思いますよ。仮に閉じこめられたとしてもきっと大川先生がなんとかしてくれると思うんです」 「それは何を根拠に言ってるの?」 今現在、大川は部屋に閉じこもって出てこない。そんな相手を無条件で信用して、頼りにする気持ちが理解できない。 「根拠というものはありませんが、大川先生はいつも『俺の言う通りにすれば大丈夫』って言ってくれますから」
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