ロストワン

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普段とは違う。明確な自信を持って湯はこ答えた。そういえば湯川と大川は二人で一緒にいる姿をたびたび見かけることがあった。特に気にかけることもなかったから忘れていたけれど、 「そう。それは大川先生がどうにかしてくれることを願いましょう」 ここで変な邪推をするべきじゃないし、正直、面倒くさいから適当に話を合わせる。その返事に湯川はパァァアと顔をほころばせて、頷き答えた。まぁ、本当になんとかしてくれたらそれでいいんだけど、多分、無理だろうと内心で呟く。湯川には悪いけれど、 それから二人で死体をバラバラに解体していく。正直、重労働の一言につきたけれど、慣れてしまえば手早くできた。 「あ、もうすぐ集合の時間じゃないですか?」 と、湯川が嬉しそうに言った。よほど大川先生のことを誉めて? まぁ、良く言われたことが嬉しいのか終始、声が弾んでいた。 「そうね。でも、その前にシャワーだけでも浴びに行きたいわ。さすがに死体を触ったもの、それくらい許されるわ。死体を冷凍庫に入れなくちゃいけないし」 と言いつつ、死体が入った袋を抱える。この建物には大きな冷蔵庫が二つあるが、一つは古くなって老朽化が進み今輪は使われていなかったけれど、ちゃんと稼働してるはず、そちらに入れべきだろう。食糧と一緒にしてしまったら匂いが移ってしまうかもしれないし、さすがにそれくらいの配慮は私にもある。死体を食べるというのは最終的な手段なのだ。 「加藤さん。一つ聞いていいですか?」 「なに?」 「加藤さんは、本当に死体を食べようと考えているんでしょうか?」 「ええ、まぁ、今すぐに食べようってわけじゃないわよ。食糧が尽きてきたらって話ってだけ。神田には内緒よ。言ったとたんにひっくり返られても迷惑だし」 と、答えつつ、私は言う。 「湯川さん。人を狂わせるってどうすればいいと思う?」 「どうしたのですか? 狂わせる?」 「私は思うのよ。人を狂わせるには暴力なんかいらない。飢えなんだって、だから、それを失うわけにはいかないでしょう?」 食うことは生きることで欠かせない行為だ。もしもそれを無くしてしまったら人は狂う。何が何でも生き残るために最悪の手段にすら手を染める。だったら、最初から意識させておくべきだ。自分達がどういう状況であるのかを、安っぽい希望になんて縋ってはいけない。 「そう、ですよね。すみません。変なこと聞いて」
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