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「いち早く犯人を見つけること、それしかないでしょ。犯人の目的がなんであれ、共倒れの心中狙いじゃないのなら少なくとも外部との連絡の手段くらい持ち合わせているものだから」
「待ちなさいよ。そんなほいほい、話を続けてるけれど、あんたが犯人じゃないって証拠はどこにあんのよ。加藤」
と、敵意をむき出しにしながら矢島が反論してくる。こいつはいちいち口出ししなければ気が済まない性格なのだろうか、
「それもそうですね。加藤さんが犯人だとするなら、説明できる部分が出てきます。貴女は第一発見者、昨晩のうちに先生を殺し、教室に放置した。朝早くに抜け出して、門の装置を破壊して何食わぬ顔で戻ってくることもできた……」
山城が同調するように言う。本気で言っているのだろうか、と、私が言い返す前に鍋島が口を開いた
「仮にそうだとしても、証拠としては不十分なんじゃないかな。夜間の外出、それも消灯時間を過ぎてからはチェックは相当厳しいし、死体の状況を見てもあれを短時間で終了させてなおかつ、門の装置を破壊するだなんて、一晩のうちにやるのは難しいんじゃない?」
「「…………」」
「それに今朝、大川先生が言ってたでしょ。買い出しに出かけてるって、てことは少なくとも今朝までは先生は生きていて大川先生とも顔を合わせたって、考えると加藤さんの犯行はよりいっそう難しいものになるじゃないかな」
山城と矢島が押し黙る。誰もがあやしい。疑わしいってことだ。
「というかさ、犯人探しよりも、あの門をどうにかすることを考えようよ」
「何か方法でもあるの?」
あるとするなら、それはかなり魅力的な提案だ。鍋島が得意げに言う。
「あの門さえどうにかできればいんでしょ。だったら無理矢理、こじ開けちゃえばいいんじゃないかな?」
「どうやってこじ開けるって言うのよ。門はがっちり閉まっちゃって人の力じゃ到底、開けられない。そのための装置も念入りに破壊されていて、それ以外にこじ開ける道具もないっていうのに」
もうお約束と言わんばかりに矢島が反論する。
「あるじゃない。一つだけ」
少しだけ間を持たせ、一呼吸したあと鍋島が言う。
「買い出しに行くため車があるでしょ。それで体当たりしちゃえば門くらいかるーく突き破れるんじゃないかなって思って」
「それ、誰がするのよ」
と、私は言った。
「門を突き破ぶるとしても、少なくても一回じゃ無理」
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