ロストワン

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牢獄だ。私は鉄格子がはめられた窓から周囲の景色を見渡しつつ、そう思った。外には高い塀が立てられ、この建物をグルリと囲っている。門は堅く閉ざされ内側から開くことはできない。外出するためには許可が必要だ。二四時間体制で監視の目が張り巡らされたこの校舎にまさまさしく、牢獄という名がふさわしいだろう。この建物がある場所が山奥に建てられていることも、その意味をさらに強める結果だ。しかし、この建物は、囚人を収容するための場所ではない。ここは校舎であり、学園であるからだ。まぁ、学園であろうと、牢獄であろうと、さして意味は変わらないかもしれない。私を含め、数人の生徒はここで、二十歳になるまで過ごすのだから、出ることが許されない。この牢獄のような学園で過ごさなければならないのだからーーーーそんなことはどうでもいいだろう。些細なことなのだ。 ピリリリリリリリーーーーーー!!!! 警報のような呼び鈴が、部屋中に鳴り響く、起床時間だ。鳴り響いて五分以内に起床しなかった場合、ペナルティーが待っているらしい。私は受けたこともないし、受けたくもないけれど、相当に重たいものらしかった。ただ、誰もが口を閉ざしているためその実体はわからない。あまり、興味もないけれど、急ぐことなく支度して、そのまま部屋を出た。朝食は一階の食堂で食べることが原則として決められている。遅刻すれば当然、食べられない。 一階に続く階段に向かいながら歩調を緩めることなく歩いていく。ちなみに、生徒の部屋は二階、教室は三階、生徒の数が少ない為、それだけで事足りてしまうのだが、毎回、毎回、下りたり上ったりを繰り返すことは少し億劫だけれど、急ぐことはない、ゆっくりしていてもこのペースなら十分に間に合う。そう、予期せぬアクシデントが起きない限りはーーーーパタパタと世話しない足音が背後から近寄ってきた。そして、そのまま私の背中と正面ではなくて、背面衝突する。避けることもできたのだけれど、このまま行けば、十中八九、彼女は階段で転倒してしまうかもしれなかった為に避けなかったというより、動くのが単に億劫だった。なるべくなら、無駄なエネルギーは使いたくないというだけだった。仮にこのまま避けて、彼女が階段から転げ落ちたりしたら、私が突き落としたように思われるかもしれない。そんな面倒に巻き込まれるくらいなら、ここで彼女を足止めしてしまったほうがいい
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