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神田と湯川を除く、全員が一階の食堂に集まっていた。沈鬱な空気の中、誰もが口を開かない。教師である大川は、教室に鎮座していた惨殺死体を目撃した途端、気絶こそはしなかったけれど、顔色は決してよくない、最年長であり教師という立場のせいか様々な物に板挟みになった結果なのだとしてももっとしっかりしてほしいものだと、私は他人事のようにそっと思う。決して口には出さないで、傍観者を貫く。
「とにかく!! 今すぐやるべきなのは、ここから出て行くことなんじゃないの!? そう思うでしょ!? というか、警察に連絡とかしてないわけ!?」
矢島がドンッとテーブルを叩き、沈黙を打ち破るように叫んだ。
「そうは言っても、ここの電話が壊れていたのだからしかたがないでしょ。そんなことを何度も確認させないでくれますか? わめき散らしたところでどうにもならないでしょ」
その叫び声に額を抑えつつ、山城が答える。この緊急時にイライラしているのか、さっきから落ち着きがない。死体の一件で警察に連絡しようとしたが、壊われていた。この都合のいいタイミングで壊れるなんて、誰かの作意を感じる。
「それはあんたが、死体を見てないからそう言えるんでしょ!? 私は嫌よ。こんなとこに居続けるのなんて、この建物内に人殺しがいるかもしれないのに、呑気にしているほうがどうかしているわよ」
人殺し、誰もが目をそらしていた事実を、矢島が掘り出したことで一気に空気が重たくなる。そう、人殺しだ。身元不明の惨殺死体を作り出した犯人がこの建物内に潜んでいるかもしれないのだ。外部からの侵入は不可能、ということは自ずと犯人はこの中にいることになるのだが、
「だから、それについて話し合っているのでしょ。感情論ばかり持ち出さないで自分の考えを出したらどうなの!!」
そのことよりも、矢島と山城が、お互いの意見をぶつけ合うだけで全く先に進まない。教師の大川はさっきからブツブツ呟くだけで、どうにかしようとする様子もない。役立たず。
「まーまー、落ち着きなって、こーいうときは冷静にならないと、ね? 仲間割れしてたってしかたがないと思うよ」
どーどーと、両手を広げて鍋島が二人を静止し、口を開く。
「やるべきことはまず、外部と連絡をとること。または、門を開いて外に出て行く。この二つなんじゃないかな。ここで口論しててもしかたがないし、やれることはやっちゃおうよ」
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