マカロン!

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 なんだろうこれは。  フレイは今の状況を客観的に見てみようと意識的に努めてみた。  時刻は午前十時過ぎ位だろうか。  場所はエバンズ一家の母屋の客室。フレイに貸し与えられている部屋だ。  その客室のベッドの上に寝間着姿で身を起し、フレイはクリスに棒アイスを突っ込まれていた。  念の為言うが、もちろん口にだ。上の口だ。下の口などない。  色々とありすぎて精魂共に疲れ切っていたフレイは、クリスによって森から連れ戻され、現在またエバンズ一家で強制療養に入っている。  亡刻の森で、そのシリアスクラッシャーぶりを発揮したクリスは、得意のワイヤーで騎士団の副総長に亀甲縛りをかました。 「エバンズ一家を敵に回さない方がいいですよ」と笑顔で彼を脅し、彼の部下に大きなじゃらじゃらと鳴る袋を無理やり握らせていたので、フレイはとりあえず見て見ぬふりをした。  ロキともその場で分れた。 「別の方法を探すしかねぇか」  そう言ってため息をついたロキは、「また顔を見に行く」と頼んでもいないのに言ってきて、何故か周りに見せつける様にフレイにキスをして去って行った。もはや挨拶のようなそれに特に何も感じないが、衆目の前でそういう事をするのは本当に趣味が悪いと思う。  去り際ロキはクリスに無言で光弾を放っていったが、完全に魔術が効かないという特異体質中の特異体質のクリスの前で、その弾は掻き消えた。 「失礼な人ですねえ」と笑ったクリスの笑顔は、笑顔に見えなかった。  帰路の記憶は断片的だ。  一つ思い出せるのは、情報屋が居眠り運転で事故った事位だろうか。情報屋に大した怪我もなかったし、幸いフレイはクリスの運転する車に乗っていたので、彼を途中で置いてクリスと二人で列車に乗った。事故処理は騎士団の連中が何とかしただろう。  あとはロエナに付くまで、ずっと列車の中で寝ていた。  ロエナ行の夜行列車。静かに休みたかったので行きと同じ個室タイプを選び、向い合せで座席に腰を落ち着けた。足を組んで、腕組みをし、とりあえず寝ようと目を閉じたが、 あんな派手で、生死を左右する出来事があった後ではそう簡単には眠れない。  高ぶった気持ちを落ち着けようとひんやりとした窓に頬を寄せ、流れていく外の景色をぼんやりと眺めていたら、ガラスに向かい席で眠るクリスの姿が写っている事に気付いた。

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