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体験作家潤平は、その名のとおり自分で仕事の現場に飛び込んで体験記を書くノンフィクションライターである。
第1回は、ニューハーフバーの実態をルボするためにニューハーフバーに潜入する。
しかし、客としてではなく従業員として内側からニューハーフバーの実態を描くために敢えてニューハーフ予備軍として就職する。
もちろんニューハーフになるつもりはさらさらないから、本人としては女装バーに入るような気持ちであって、彼女達のように体を変えてしまうような気もない。
あくまで仕事のためにやるのだから、彼女たちの生活とは一線を画するが、浮いた存在になっては店にとって役立たずの存在になってしまうから、そこはひとつ彼女たちの中にいても馴染むような存在になる覚悟を持って潜入するとしよう。
何が待っているのわからない未知の世界だ。
今回は仙台の店に潜入することにした。
この世界の人脈がないから、専門情報誌でニューハーフバーの求人を探すことにした。
仙台のTという店が従業員を募集していた。
早速面接にいくと、バーテンダーは募集していないと断られたが、ニューハーフとして働きたいというと、ママと面接してもらえることになった。ママは百合子という名前で、40才で顔以外の体全体は完全工事済みのニューハーフだった。
声も女性そのものだった。
子宮と卵巣を摘出した女性と同じような存在といってもいいだろうか。
といっても実際に性器を見せてもらったわけではないから、それが本物にどれだけ近いのかは謎のままである。
福岡出身で、大学受験前に親に男が好きだからという告白して家出をしてしばらく大阪の店で働いたあと、東京のプチ.・シャトーという高級ニューハーフバーで30代まで働いたという経歴の持ち主だ。
その後、仙台の店に人の依頼で雇われママとして最近来たばかりだという。
収入は東京時代の3分の一に減ったが、恩ある人から頼まれたので断れなかったという。
「塗ればある程度年は誤魔化せるけど、40才ならコミックとして雇ってあげるわ。ちょうど一人お笑いが辞めたところだったから。」
ということで、他の一人前のニューハーフのお姉さん達のようにきちんとした女性名ではなく、イクラと名づけられた。
コミックとは(お笑い・道化役)用の役である。
寮があったが、自分で借りた部屋から通うことにした。
さあ、いよいよ初体験の仕事が始まる。
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