第1章

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本物の女 ニューハーフといっても、完全に工事済みのものもいれば、おっぱいと金〇〇と両方ぶら下げているものもいるという魑魅魍魎の世界である。。 この店では、この世界で10年のキャリアの江梨が、おっぱいと男性器をつけているただ一人の存在である。 タイ人のナエルと韓国人のユナは男性の体で、その他のほとんどは顔以外は完全工事済みである。 ママは、ニューハーフバーで体に手を加えないで、男の体のままで営業するヤツはズルいと考えていたようだが、確かに工事には多額の費用がかかるし、それを敢えて一線を越える体をいじる行為にはそれ相当の覚悟もいるだろうし、そうするには、そこに至るまでのやむにやまれぬ本人にしかわからぬ切羽詰まった事情もあったのだろう。 それを考えれば、単に女装することでこと足れりとする彼らのやり方は腹立たしかっただろう。 かくいう潤平も、腹立たしい組の一人に入っていたのは間違いない。 江梨のように。おっぱいと金〇〇の両方を持っているものは、両性を楽しみたいのか、そういうあり得ないシチュエーションを好むマニアックな趣味の男に合わせているのか。 また、玉だけを抜いて竿はまだ付いているという工事中の者もいる。 客の方も、一般の怖いもの見たさのサラリーマンの他に、マニアックな客もいて、おっぱいと金〇〇の両方が勃起する状態に興奮するという者もいる ノーマルな客は、やや贅沢なお化け屋敷に来る感覚で来ていて、マニアックな客にとっては、おのれの特殊な嗜好を満足させるための数少ない場所である。 だが、中年のお客さんの中には、しっとりとした情愛を求める人もいて、 「岡山のバーのニューハーフはよかった。」 と感想を漏らしたりするが、今時のさばさばしたニューハーフの薫ちいママに、 「その客はニューハーフのことがわかってないのよ。」 と切って捨てられる。 時代と共にニューハーフの姿も変わって行くのかもしれないが、この世界にも女性を凌ぐ女性らしさを求める人がいるのも事実だろう。 バーには観光客や、一般世間からはぐれた女客もいて、彼女達のニューハーフを見る視線は相当厳しい。 「ママのおっぱいはやっぱりつくりものね。あれは女のおっぱいじゃないわ。」 とか、 江梨に対して、 「あっ、ストッキング二枚重ね履きしてる。あんた、相当脛毛濃いわね。」 という言葉を平気で投げつける。
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