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そのあと、潤平は三人いるうちの一人の常務に呼ばれた。
部屋にはいると、いきなり胸を蹴り上げられた。
「大事な客に逆らいやがって!!!
このクソおかま野郎!!!」
「ママには悪いと思っています。」
「そうかい、そんな殊勝な気持ちがあるのなら、
じゃ、今月の給料の半分をママに渡しとくよ。」
ママに渡すはずはない。
こいつが猫ババするのがいつものパターンだ。
潤平は今が辞め時だと悟った。
店に戻るとさっきのヤクザはもう帰った後だった。
ママが、心配そうな顔をして潤平を控え室に呼んだ。
「ごめんなさいね。
ああでもしないと、あの客は何をしでかすかわからないから。
あんたは、体が痛かっただろうけど私は心が痛かったのよ。」
店長が来て、
「あの男は怒らせると何をするかわからないやつだから、向こうが手を出す前にこっちが先にお前を痛めつけたのさ。悪かったな。」
そう言って店長は潤平の肩を叩いた。
「店、辞めます。」
「仕方がないな。」
「元気でね。」
辞意はあっさり承諾された。
おそらく何度も同じことがあったのだろう。
化粧を落として、着替えて、手荷物を1つだけ持って店を出た。
仕事と割りきっているはずだったが、何故かほろ苦い思いがこみ上げてきた。
でも、よくよく考えたら悪いことばかりじゃなかったな。
外に出ると、12月の凍りつくような風が身にまとわりついたが、クリスマス間近の、街のネオンが照らす路のはるか上の満天の星のまたたきは、まるでダイアモンドのかがやきのように光って見えた。
「あっ、流れ星か!!」
願い事1つ掛けてみようか!
第1回潜入ルポ完了
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