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その頃、食堂で働く彼女は祖母と話をしていた。カウンター越しに、無邪気な笑顔で笑ってばかりいる。
「それでね、おばあちゃん!」
この言い出しはいつもの話の始まりだ。祖母はもう軽く10回は聞いている。だから、もう聞かなくてもどうなっていくのか、完璧に覚えてしまっている。それでも嫌な顔一つしないで聞き入れる。
それは孫娘がこんなに笑うのを久しぶりに見たからだろう。
「はい、はい。それで?」
はじめて聞くかのように合いの手を入れる。それに気を良くして彼女は笑って答える。
窓の外は、桜がやや葉桜となりつつあり、その先の海は光を輝かせ、まるで彼女の瞳のようだ。
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