一欠片のチョコレート

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感謝の気持ちを伝え、コンビニを後にする。 しかし車に乗ろうと助手席のドアに手を掛けた時、私は大変な事実に気付いてしまったのだ。 「あっ・・・!! 慧、お酒飲んじゃったんじゃ・・・。」 慧は確かに、居酒屋でカシスオレンジを飲んでいた。 しかもノンアルコールのものではなく、正真正銘“お酒”と書かれたものを。 慧は私の言葉に気まずい笑みを浮かべ、頭を掻いた。 「本当は、こういう事しちゃダメなんだぞ?」 そう言いながらも慧は、自分の車の運転席に乗ってエンジンを掛ける。 そして、戸惑う私を助手席に乗るよう優しく手招きした。 「大して飲んでないから、少しくらい大丈夫だろ。 ・・・って、こういうの苦手?」 モラルに反した行為。 それ以前に、法律違反だ。 なのに彼の浮かべるその笑みはとても無邪気で、不思議と何でも許せてしまいそうな気持ちにさせられる。 「ま、いっか・・・。 でも気を付けてね。 警察に見付かったらまずいし、あまり目立つところに行くのはよそうよ。」 「ああ、そのつもり。」 慧はスーパーの駐車場から車を出し、どんどん有楽街から離れていく。 遠回りして駅前商店街の外れに向かい、その先にあるアンダーパスを抜けた。
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