一欠片のチョコレート

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時間は21時。 夜の西公園に人気はなく、駐車場に停まっている車は他になかった。 慧は何故この場所に私を連れてきたのだろうか。 少しだけ、脳裏に不安が過る。 しかし私は平然を装い、慧がコンビニで買ってくれたチョコレートのパッケージを開封した。 「このチョコ、すごく美味しいんだよ。 慧も食べてみて。」 そう言って私は、運転席にいる慧にチョコレートを勧める。 厚紙で作られたトレイに並ぶ12ピースのミルクチョコレート。 程よい甘さと舌触りの良い口溶け感が大好きで、見かけるといつも買ってしまう私のお気に入り。 慧は「ありがとう」と言って、私が差し出したチョコレートに手を伸ばす。 そして1ピースのチョコレートをつまみ、自分の口へと運んだ。 「うっ・・・。」 チョコレートを口に入れた瞬間、慧の目が大きく見開く。 もしかして、口に合わなかった・・・!? そう思った時だった。 「美味っ!何これ!?」 そう言いながら、慧の手が私の持つチョコレートをもう1ピース奪っていく。 2つ目のピースを口に入れた慧の顔には、満足気な笑みが湛えられていた。
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