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薄暗い檻の様な部屋に二人の男女がいた。
年齢はどちらも16,17歳ほどだろうか?
男の子は花粉症防止の大きなマスクを着け、片付け忘れた炬燵に潜っており、それを横目に見ながら女の子は紺のジャージを着てだらーっとしている。
男は女の子の格好を見ていつものように『だらしがないなぁ』と呆れた目になっている。
”いつものように”と言ったが実際二人がどのくらいの仲なのかと言われると、簡単に言えば悪友のような存在である。
5年前男は親元を離れ、その後色々あって一人この場所にやってきた。
女はそれ以前からここに住んでおり、二人は出合ってからすぐに気が合ったのか仲がいいようだ。決して男女の仲ではない。
そもそもこの”場所”はそう言った教育には疎く、偏った知識を教えていた。
勿論中学レベルの勉強も教えてはいたが、教師役の大人が馬鹿なため、教えられていた生徒が理解できていたのかは定かではない。
それまでぼーっとしていた女が面倒くさそうに口を開く。
「あー畜生…どうして俺が今更学校に通わねえといけねえんだ?」
因みにこの女口調はただの口悪い男子であるが、見た目は顔貌の綺麗なお姉さんである。
とはいえ性格も男勝りな上、外出する時も変装しているため周りの人の評判を集めることはない。
女はこの施設の古株の一人で、施設の大人からはNo.2と呼ばれている。
とはいえ本人たちがそんなモノみたいな呼び名を気に入ってるわけもなく、個人間で適当な呼び名をつけあっており、この女は周りから”時雨”と呼ばれている。
名前の由来は…おっと、予断が過ぎた。
女の話を何度も聞かされている男はうんざりした顔をした。
『その話今日で三度目だZE☆』と言ってやりたかったが、言うとどうせ『うっせえ黙って聞いてろ』と言われかねないので黙っている。
決して時雨が怖いからではないはずだ。
「ねえ時雨~」
男が年齢不相応な高めの声で呼びかける。
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