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「なんだよNo.6 改まって一体何が聞きたいんだ?」
愚痴に口を挟んできた男…No.6に時雨は問いかける。
”No.6”は施設の大人からの呼称であるが、この男はそんなモノ扱いの呼び名を何故か気に入っており、他の子供たちにもそう呼ばせている。
…とはいえ戸籍上名前はあるのだろうが、本人に興味がないらしく誰も知らないのはここだけの話。
No.6はこういったことからも分かるようにいわゆる”変な子”であり、お調子者でもある。
No.6は足で時雨の大きなお尻をツンツンすると時雨の言葉に返答する。
「時雨がどうして学校に行かなくちゃいけないんだろうね 別に僕でもいいと思うんだけれど」
「ふっ…俺に聞くなよな」
どこか不満げな言い方に時雨は思わず微笑むが、さりげなく尻を触られたことでまた不機嫌になる。
いくらお調子者とは言っても勝手に女性の尻を触るのは犯罪になるだろう…とはいえ時雨はそんなこと面倒くさくて誰にも言わないだろうが…。
「はぁ…あの普通君が学校に行くのは分かるけど、君みたいな人間を外に離したらやばいんじゃないのかな?」
「………」
No.6の言った”普通君”という言葉に時雨は何も言わずただ黙る。
”普通君”もNo.6や時雨同様この施設に収容されている子供であるが、彼は他の収容児(?)と違ってとある特殊な遍歴でここにやってきているらしい。
詳しくは時雨やNo.6も知らないが、”普通君”はいつの間にかこの施設に来ていたのだ。
そうだというのに性格は普通で、運動や成績も普通と言ったように何の特徴もない。
時雨も自分で言うのもどうかと思うが、成績は良く運動能力もできている…それがある種”ここの普通”である。
そんな中で”一般的な普通”である通称普通君はむしろ異常なのではないかと時雨は常日頃から考えている。
「…ふん、そんなこと今更だろう? それよりもうそろそろ時間だ 俺は施設長に挨拶に行ってくるぞ」
時間が経って少しずつ冷静になってきた時雨はさっきから今までの自分を恥じ、振り払うかのように立ち上がるとNo.6の返事も聞かず、数十メートル先にある施設長室へ向かう。
「…いってらっしゃい ”異常な肉体”でどこまで普通を目指せるのか楽しみにしているよ」
一人になったNo.6は虚空に向かってぽつりと言う。
そして眠気がやってきたので炬燵の中で眠りに落ちた………。
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