プロローグ

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「あなたが嫌なのは分かってるんですけれど予備がないんですよねぇ…」 泣き止んだらしい女性はさっきまでのことをなかったことにしたらしい。 もう一つ置いてある大きな袋はもう一人のものであり、勝手に渡すわけにはいかないようだ。 「何でそうなるんだ…ったく、施設長のおっさんは俺をいじめてそこまで楽しいのかよ!!」 時雨は口調は悪いし態度も悪いが、仲間思いであり他の教師役からの支持も厚いのだ。 以前ここで起こった3度の大きな争いのうち2つは時雨が収束の手伝いをしたのだ。 なので感謝はされどもここまで精神的な嫌がらせをされるとは思ってもみなかったのだ。 今更外に放り投げた制服が直撃した人物について気になりだしたが、施設長に対する日頃の恨みつらみを思い出すことによって押しのけた。 「確かにあの人No.2によく余計なことをしてますけど…でも感謝はしてると思いますよ? だからこその”公的な外出許可”なのですし」 「何…? どういうことだよ?」 言われた言葉が分からず聞き返す。 『晩飯に時雨の嫌いな山葵を投入してくるあの施設長が感謝などするわけがない』と考えていたところで後半の言葉が聞き取れなかったのだ。 「そのままですよ 普段みなさんたち”収容児”に自由なんて有って無いようなものですからね 素行がまだまともであり、後輩を止めてくれたお2人に対するお礼のようなものです」 「・・・・・・」 言われたことをかみしめ理解する。 そう…この施設は基本収容された子供は外に出されることはなく、一部の例外を除いて外出許可は得られない。 そして外へ出ようものなら教師役は全力で鎮圧しに来るだろう…というより、もうそんな事件がすでに2度起こっていた。 結果は2つとも失敗に終わっており、今は”外に出ること”を考える人は恐らく1人もいないだろう。 なので長年ここに収容されている時雨は『外へ出たい』などと言う考えはすでになくなっていたのだ。 すでに分かっているだろうが…一部の例外とはこのように、施設側が外出許可を出すことであり、既にこの施設から2人の収容児が社会に出ている。
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