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「なに見てるん?」
信号待ちの間見入っていた電光掲示板。
俺の目線の先を振り返りながらケイトが言った。
「今やってたCDランキング。あのアーティストのアルバム欲しくてさあ」
いつ来てもここの交差点の人の多さには辟易する。
押し流されないよう人混みを避けながら答えれば、
「…ふぅん。どうゆうとこがええの?」
なんとなく素っ気ない口調で聞き返される。
どうとはまた抽象的だな。
「んー、何かああゆう感じの世界観とか歌詞とか」
ケイトはう~んと唸って顔をしかめる。
「標準語だから、いいん?」
「はは、別にそうゆうことじゃ……」
いや、なくもないか?
関西弁のノリも好きだけど、歌にすると雰囲気全然違うもんなあ。
人波に揉まれる不快さに耐えながら考える。
普段会話する分にはそこまで変なとこないから、つい忘れがちだけど、日本に来て3年ちょいだもんな。
まだまだ分かんないことも多いだろうし、出来るだけ教えてあげたい……んだけどなんてゆうか、生粋の日本人なら分かるニュアンスとか、そうゆうのがどうにも上手く説明出来ない。
「告白される時って標準語のほーが嬉しいん?」
「え?」
「なんや、女の子らが話しとったんやけど…」
ケイトはちょっと考え込む風に顎に手を当て、1人言みたく呟いた。
『ケイトくんって見た目本当王子様だよね~』
『なのに関西弁ってギャップがたまんなーぃっ』
『…けど、普通に話してるとこも見てみたくない?』
『見たい見たい!絶対似合うよね!』
…なんて話をしてたとこにたまたま通りがかった、と。
なるほど確かに似合いそうだ。
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