33人が本棚に入れています
本棚に追加
その日以来、講義よりもよっぽど熱心に標準語の取得に四苦八苦するケイト。
大学内を歩く道すがら、今日も特訓は続く。
「ありがとう」
「…ありがとう?」
「言い方変わってるだけで普通に訛ってる」
「うわ、ほんまっ?」
「ほらまた関西弁」
「うあああ」
大袈裟に頭をかきむしる様とか、とっさのリアクションも関西っぽいんだよな。
習性って厄介だ。
「ん~…中々覚えられへ…覚えられないな…」
それでもこうやって自分でミスに気付けるようになったんだから対した変化。
…頑張ってんなあ。
本人はまだまだ納得いってないみたいだけど、正直ケイトの上達ぶりは凄い。
一度身についた言葉遣いは中々直し難いってゆうけど、それでもケイトは今みたいに油断しない限り、教えた分は大分話せるようになった。
自惚れじゃなく、俺のサポートのおかげもあると思う。
でも飽くまでケイト自身のやる気があってだから、恋の力って偉大だ。
…面白くない。
関西弁でこそケイトなのに。
もっとも本人が良いってゆうんだから、俺が口出す筋合いないけど。
「あの、神原くん…」
講堂まで歩いている途中。
やや緊張した面持ちの女の子がケイトを呼び止めた。
「ん、俺に用?」
にこっと微笑みかけられて、女の子はうっとりと見惚れながらも
「え、と…あの、向こうで…」
ちら、こっちを見て言い辛そうに呟く。
「え」
彼女と俺とを見比べ、ケイトは戸惑うような素振り。
最初のコメントを投稿しよう!