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「ベタベタ引っ付いてばっかじゃお互いの為にも良くないってこと。ケイトもさ、最近標準語すごい上達したじゃん?せっかくだし行って来いよ。俺のことなら気にしなくていいから」
「……何や、怒っとる?」
不安そうな顔色しといて核心突くとか何なんだよ。
建前に潜ませたにも関わらず、容易く本音を見抜かれたことに理性が逆撫でされた。
「まさか、怒ってるわけない。けどそ…だな。ケイトはちょっと人の気持ちに鈍いとこあるから、そうやって気を使うのは良いことじゃん?」
「え…」
やめとけ馬鹿。
頭の隅で辛うじて冷静な自分が諭すけど、一度ネガティブモードに突入してしまったら止まれない。
止められない。
「誰にでもフレンドリーなのも結構だけどさ。抱きついたりスキンシップって、中には嫌がる子いるのわかってる?第一、ケイトは好きな子いるんだろ。好きな子以外にベタベタするのってどうよ。軽い奴って勘違いされちゃうかもしんないし、俺ならもし恋人がそんなだったら嫌だけどな」
こんなケイトの人間性まで否定するような発言。
ただの八つ当たりだ。
そんなんだから気付かされるんだ。
ケイトはもう俺(=通訳)がいなくたってやってけるってこと。
本人じゃなく周りにそう見られてたこと。
「……ごめん…俺、そうゆうのよく考えてなかった……」
「っ」
俯く姿の殊勝さに我を取り戻しかけた、けど。
どうせ言ってしまった言葉は取り返しが効かない。
「も、いいよ。行こうぜ」
自分から話を振ったくせに言うだけ言って背を向ける。
罪悪感はあっても素直に謝る気なんて起きない。
そのまま俺は、振り返ることなく先を急いだ。
(だってお前、もう俺なんていなくても平気だろ?)
だったら俺だって1人でいい。
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