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「いたいた、ケイトくん!」
思考を巡らせてた俺とケイトの下に、1人の女の子が駆け寄ってきた。
「教授から課題預かってきたよ、はい!」
多分講義で一緒だろう、何となく見覚えのあるその子はにこっと顔を綻ばせて、数枚のプリントを差し出してくる。
「あぁ、すっかり忘れとった!ありがとな~」
目が眩むなんて表現すらぴったりな笑顔を向けられた彼女はうっとり。
更には思いっきり抱きしめられ、待ってましたと言わんばかりに受け入れる。
見慣れた光景とは言えどっとため息。
この男女誰かれ見境なしの過剰スキンシップこそ、ケイトが周りと馴染めない一番の理由だと俺は思う。
てゆうか、こんな些細な日常のワンシーンでさえこのズレっぷりなのに、どうして本人は気付かないんだ。
そうゆう意味では早々に慣れた俺とは違い、他の連中は同じ男に抱きつかれるのを当然嫌がってるし、女子は女子で変に意識しちゃったり勘違いする子続出。
ただ、そうゆうケイトと仲良くなったが為に(あいつ目当ての)女子にやたら話しかけられるようになったり、(身の危険を感じるとか謎な理屈で)ケイトが居るところには必ず呼ばれた。
おかげでサークルに入るまでもなく俺の交遊関係自体は広がったから、それなりに感謝もしてるわけで。
本人が気付いてない内は、はっきり指摘しなくてもいっかなあ。
なんて思ってたりもする。
「…頼人?」
唐突に彼女から離れるケイト。
そのまま至近距離から顔を覗き込んできたりするから、ちょっとだけ後ろめたかった俺は
「ん、どした?」
なんて慌てて笑顔を装う。
瞬間交錯した視線。
(…あれ?)
かすかに違和感。
「いや、やっぱ何もない」
すぐ確かめようとしたけど、瞬きの後にはこっちが拍子抜けするくらいにいつも通りの笑顔。
…気のせい?
そうだよな。
ほんの一瞬とは言えあんなのらしくない。
思い詰めたようなあんな表情、きっと目の錯覚だったんだ。
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