書家と篆刻家

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私の師匠が言うには代書き屋を名乗るこの人は、会派云々には所属せず師範として弟子をとるでもなく、 若い頃は会社勤めをしてやりたい放題、好き勝手にやりながらも書の道へ戻り、 今は一人で細々と暮らしているとのこと。 周りを見回せば賞状用や結婚式用なのか、紙束が詰まった段ボール箱が所狭しと積み上げられている。 ――変わり者だけど嫌いじゃないよ、俺は。 人の選り好みする師匠が言うのだからきっと悪い人ではないのだろう。 ――ただ、若いのに飄々としたヤツでな、頭の固い輩ほどあれこれ文句をつけたくなるんだよ。
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