書家と篆刻家

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『獨見之明』 他人に見えないものを見抜く聡明さ。 ――あんたはね、もうちょっと人を見る目を養った方がいい。 年中酒に酔うへべれけ師匠からこの印譜を渡された時、ガツンと頭を殴られたかのような衝撃を受けた。 私の自堕落な生活と置かれている状況は見る人が見れば一目瞭然なのか。 朝まで飲んでは酔った状態でそのまま仕事に行く。 自分がいつ眠り、いつ目覚めているのか、それさえも曖昧に過ぎてゆく日々。 グサリと突き刺さるようなその一言は、図星すぎてこの上なく痛かった。
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