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「いやおかしいだろ! 何でお前は三つで、オレ一つなんだよ! 攻撃の魔術じゃねーし」
「ま、まあ、文句を言っても仕方ないよ。それより……」
シンジが辺りをキョロキョロと見渡す。レンはようやくそこに気付いたか、と大きな溜め息を吐く。
「ここ、どこ? 森っていうことはわかるけど」
「それはオレが聞きたいわ。《フロート》でちょっと浮かんで、周りに森か町がないか見ようぜ」
「あっ、そうだね! えっと……」
一瞬、魔術の使い方がわからず、どうしようと思ったが、体の方が勝手に反応した。
自身の足元に、オレンジ色の線で描かれた五芒星。それを取り囲むように円が現れて魔方陣と成し、二人は魔術名を発す。
「「《フロート》!!」」
足元で輝く魔方陣が空中に浮き上がるのに連動して、二人の体も一緒に浮かんでいった。
救世神といた白き世界のような海の中にいるようにプカプカと浮かんでいるのではなく、空中に疑似の足場を作り出して立つのが浮遊魔術である。
二人は初めての魔術の使用に、少なからず興奮していた。
プカプカと浮かぶのなら、風船でもくくりつければいいが、地面の上に立っているのと変わらないようにするには、地球の技術では難しい。
「うわ、うわっ! 浮かんでる。浮かんでるよ、レン!」
シンジは魔方陣を自由自在に操り、走ったりスキップしたり、バク転したりとやりたい放題だ。
一方、レンはというと、《フロート》を維持するのに集中していてそれどころではない。
「お……お前、遊んでないで探せ……」
「ごめんごめん。ちょっと楽しくって。うーん、あれって城壁じゃない?」
「なに?」
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