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「ん? お前たちは……」
「は、ハロー」
「すみません。オレたち、かなりの田舎から来まして」
「ふむ」
強面な顔、全身を包む重厚な鎧、五人まとめて串刺しにできそうな槍、とてもではないがこのような人物にジロジロと見られては居心地が悪い。
二人の格好は、通っていた風涼高校の制服で手にはカバンを持っている。
そういえば……とレンはふと前にこの状況に似た小説を読んだことを思い出した。
主人公は異世界から来たなどではなく、その世界の人間だが村伝統の服を着ていて、それを見た兵士は怪しいヤツだと牢屋の中に放り込まれてしまった。
この状況に照らし合わせれば、二人とも牢屋に放り込まれということに──
「こんな若い連中まで……くっ、行っていいぞ。オルデインロードを真っ直ぐ歩いた先にあるぞ」
「ありがとう……ございます?」
何が? とは聞かない。
ここで聞いて兵士に疑念を抱かれ、自分たちを調べられたら非常に困ったことになる。
というわけで、二人はそさくさと門を通り、首都ローディアに着いた。
街並みはファンタジーゲームに出てくる景観で、人々の顔は笑顔で溢れている。
道の邪魔になると、二人は木陰に移動するも本当に異世界に来たのだと景色を見て実感した。
「ねえ、レン。これからどうする?」
「どうするも何も、一刻も早くこんな世界から脅威とやらを探し出す。そして、叩きだしてオレたちの世界に帰る」
「あっ、魔王を倒すんだよね? なんだかゲームの世界に来たって感じだよ」
はあ。レンはとても大きな溜め息を吐く。
「お前、だから毎度毎度騙されるんだよ」
「え?」
レンが何について言っているのかわからず、首を傾げる。また大きく溜め息を吐くと、木に背中を預ける。
「いいか? 言っておくが、あの男の言う魔王が本当の脅威だなんてオレは一切信じていない」
「どうしてさ。彼は、魔王が脅威だって言ってたじゃないか」
「だからなんでそれを鵜呑みにするんだよ。オレたちをいきなり異世界に放り込むヤツだぞ? あいつが神様だっていう保証がどこにある?」
「それは……でも、彼が嘘を言っているようには見えなかったよ」
「でた。お得意の勘ですか」
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