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なんだろ? 指定時間を聞き間違った私に、再び怒りたいのかな? 「お電話代わりました、元村です」 覚悟を決めて電話に出る。 「花、代品とかも、……もういいから」 「えっ」 意外な言葉に素っ頓狂な声が出た。 「その代わり、俺が贈ったやつの" 花言葉 "を当ててみてよ。」 「………あ、あの?」 今まで色々なお客様に対応してきたけれど、 「ハナズホウ、カリフォルニアボビー…………ちゃんと、メモってる?」 こんなおかしなクレームは初めてだ…____ 「お客様、私、あまり花言葉は詳しくありませんのですぐには解答できません」 低く 細く、人物像が全く浮かばない声の主。 「また、かけるよ」 そう言って一方的に電話を切ってしまった。 ツーツー………… 「元村さん、なんだって?」 担当営業と桃田さんが心配そうに声をかけてきた。 「……もう、補償はいいそうです。」 ある意味一番不気味な電話だ。 私は花の配送伝票を見つめて、荷主の名前を、へんな汗をかきながら確認する。 ーー水城ユウ
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