透明

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「元村さん、あなたにクレームの電話が来てたわよ」 午後からのシフトに入って二時に出社した私に、コールセンターの女性課長福井さんから、良くない報告があった。 「……どんなクレームですか?」 甘い夜の余韻は、いっぺんに飛んだ。 「昨日、花の配送、注文受けたでしょ?」 「………はい…」 1日に何十件とこなす電話。 何となくしか覚えていない。 「14時までにお届けだった花、 ドライバーは、あなたから15時までって聞いたそうよ」 確かにそう、ドライバーに手配した。 「お届け先は、昨日は14時閉店のギャラリーだったからオーナーいなくなって 仕方なくドライバーは、出荷もとに電話して花を返送したらしいの」 福井課長からの報告に言葉を失う私を、 桃田さんは遠くから、心配そうに見ている。 「わかりました、出荷もとに電話して謝罪します」 仕事上は心配かけたくない。 私はよくある謝罪電話を、あまり深く考え込まずに依頼主に電話する。 「昨日、受け取ってもらわなきゃ意味のない花束だったんだ」
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