桃色

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「顔に似合わずって……私を見た事があるんですか?」 動揺のあまり、ちゃんとした敬語が出てこない。 課長の福井さんが、私のうろたえに気付いて、 "かわろうか?" とメモに書いてくれている。 私は、首を横に振りながら水城の返事を待った。 「あなたの会社、会報誌出してるよね? 宅配センターに置いてるから社外人間でも読める。 今月はそちらのサービスセンターが特集だったじゃない? あなたを見つけたよ」 毎月、全国各地のセンターを紹介するコラムがある。 たしかに先月、写真撮影があった。 「元村さん、キレイだ」 受話器からの囁きに、背中の体温が一気に五度下がったみたいだった。
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