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もっと薄気味悪い男を想像していたから少し驚いた。
繊細な容姿は女性に近いかもしれない。
___……だけど、
「見張っていたんですか?」
言動や行動は、不可解な所が多い。
「衝動的だよ、あなたを、元村さんを見たくなったんだ」
随分、薄暗くなった街並みの中、ピンク色の傘をさす不思議な男。
「…………何が目的なんですか?」
ーー"衝動的"
絶対ウソだ。
会うためにはじめからドライバーではなく私に配達させるつもりだったに決まっている。
「花はちゃんと渡したわ、もうこれで、私の仕事は邪魔しないでください」
いくらキレイな男だろうと、
いくら写真の才能があろうとも、付きまとわれるのはゴメンだ。
「サヨナラ!!」
わたしは、普段口に出して使うことのない挨拶をして、その相合い傘から飛び出した。
早く飛び出して、あのギャラリーからも、ベタベタしていた夫婦からも、
ストーカーからも離れたかった。
「仕事場には電話しないよ、約束どおり。
だけど、まだ終わってないよ」
氷のような声が再び雨を凍てつかせた。
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