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「元村さん」
翌日、出勤するとすぐに、
" 話があるから "
と桃田センター長に応接室に呼ばれた。
「はい……」
ここは、私が就活の際に面接を受けた場所。
めったに入る事がないから少し懐かしかった。
「昨日は相談してほしかったな、事前に…」
ソファーに腰かけながら桃田さんは、そっと、私の肩に手を触れた。
「………すみません。水城さんから指定配達を受けたので」
『見られたくなかった』、そう言っているんだ。
「水城というカメラマンは、
嫁さんが掘り出した、これから注目される有能な男だと言っていた。
今は写真だけじゃ食っていけないから、
スタジオも経営してる。へんな客ではないらしい」
「……みたいですね」
一体、どうしたいのだろう?
「いつも、あんな風になったりはしないんだ」
夫婦間の仲良さの度合いを言い訳されて、
「息子の万引き問題で話合っていたら、
あっちが感傷的になってしまって……」
私にどう気持ちの整理をつけろというの?
「キスは雪以外とはしたくはなかったんだよ」
私の決意を揺るがして
" 真面目 じゃない恋 " を持続させたいの?
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