七色

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「ちゃんと、奥さんに遺族控え室で渡したよ」 兎野さんが電話をかけて報告してくれた。 「ごめんなさい、託したのに消えてしまって」 私は 無責任な上に、 非常識な女だ。 「いや、いいんだけど、居づらかっただろうし、長嶋さんが元村さんの事を色々、ふれ回っていたのが、気になって……」 「……想像つくよ」 私は再度詫びて、電話を切った。 「あの、イケメン既婚者?」 水城が車を運転しながら、私の閉じた携帯をチラッと見る。 「……彼は、幸せそうなの……兎野さんって言うんだけど 彼の話を聞いた時だけは、"結婚"っていいなって思う」 不倫とは無縁な人…… 「結婚ねぇ……」 水城は、微かに苦笑いをし たどり着いた自宅マンションに、報道陣なとがいないか確認してから 車を降りた。 「……わたし、行って大丈夫なの?」 「桃田の奥さんは、今、いい妻演じているし、 もし彼女が来ても、俺はここを追い出されてしまう覚悟は出来てるから」 「……………」 急に 私を選んだ水城……… 「わたし、お金なんか無いわよ」 通帳だってあるべき所に返還した。 「雪は、身ひとつで居てくれたらいいよ。 」 夫人と、 彼が 淫らに過ごしていた空間、 躊躇いながら再び足を踏み入れる。
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