七色

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「久しぶりに会った友達の家に泊まるから」 母親に嘘をついた。 こんな腫れた顔なんか、誰にも見せられない……。 私は市外から出てビジネスホテルに泊まることにした。 やっぱり、車の寝泊まりは 少し怖かったから。 「朝食は付けられますか?」 「いいえ…」 顔を見られると恥ずかしくなり、ラブホにすれば良かったと後悔。 だけど、一人部屋に入れば 先ほどの、 『一緒に東京に行ってくれ』 水城の言葉が繰り返し頭の中でエコーする。 あの瞬間、嬉しかったのは事実____ 私は桃田さんから預かった通帳をつい、開けてしまう。 「………」 毎月、定額貯金された子供たちのためのお金。 800万ずつあった。
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