紫Ⅱ

3/16
112人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
血がつながっていない事実は、確かに嬉しかったし お父さんと会えたのも とても喜ばしいこと…… だけど…… 水城の本当の父親は誰? 彼を愛した肉親は、どこにもいないの? 「雪……軽蔑しているか?」 複雑な顔をした私をお父さんは心配そうに見た。 「いま、俺は日雇いの土木関係の仕事をしている。 勿論、1人だ。」 作業着が今日も仕事なんだと訴えている。 「軽蔑はもうしない、 ただ、最後に聞かせて。」 " また会うかもしれない"なんて思えない。 「……最後に?」 やっぱり 私は、1人で育ててくれた、 お母さんの味方だから。 「私と、 水城、 ……ちゃんと愛してましたか?」 こんなクサくて、 悲しい言葉を吐くのも、多分最後……… 「……もちろんだ、 雪も、血がつながっていないと分かったユウも、 思い出さない日はなかった。」 片親でも、そこそこ幸せだった私……。 お父さんに愛されていなかったとしても、 大したことじゃないと思っていた。 「雪」 父は、 足元に置いていた、大きな紙袋を手にとった。 「ずっと、二十年間、 渡し損ねた誕生日プレゼントだ。」
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!