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この男は、俺をホントに愛してるんだと、
そう、桃田容子が言っていた。
ザラザラした口元を痛い程に押し付けられ俺は、堀内の唇から必死に逃れようとしたけど、
奴の力にはかなわなくて……
一瞬閉じた口の、その中から
プチっ!と
なにか割れる音がした。
大量のやつの唾液とともに、今まで味わったことない薬の味が俺の口の中に広がった。
「ちゃんと、飲め」
唇を離した堀内は、俺の顎をしっかり掴み、鼻まで摘んだ。
"…__絶対に飲まない………"
そう思ったのに、
呼吸ができない身体は、自然と口内外のものを取り入れようとして、
……ゴクリ……と
それは、痺れさえ伴いながら
俺の喉を通っていった。
「………安心しろ、
桃田が飲まされたものより毒性が強い。
あまり苦しまずに済む。」
ドンドン!!!!と
トイレのドアを叩く音がした。
「堀内!!大人しく開けろ!!中の男性を解放しなさい!!」
………警察だ………
だけど
もう
遅い______
大量に吹き出る汗と、呼吸困難に陥った俺を激しい心臓の痛みが襲った。
「…………ハァ……っくそっ……」
ガクガクと座り込む俺を、愛しそ うに見つめながら
堀内もまた
苦しみ出した。
「ユウ………また
あと でな」
自身の身体から吹き出た汗は、
まるで血が吹き出したかのように、命の危機を表している。
「………………ゆき……」
苦しみの絶頂のなかで、
幻を見る________
薬物は、俺の意識と、生気を奪った。
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