癒せぬ傷と同じ痛み

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もしかしたら、本当はこれまでも話を聞いて欲しかったのではないか。 そう思ってしまう程、慧は胃の中の不快感から嘔吐を繰り返すように、何度も脱線しながらも自分の過去を時系列に沿って私に話し続けた。 ここに来て初めて知った事。 元々慧は、この街の人間ではなかったのだ。 そして出身校や家庭の事情も、私は全て知る事となった。 「生まれは札幌なんだけど、小学生の時に両親が離婚してさ。 それから高校を卒業するまでは歌志内に住んでたんだ。 そんで、高校は南高に通ってて・・・。」 以前慧は、お母さんと妹との3人暮らしだと言っていた。 その理由は想像付いていたけど、深部に触れてはいけないと思ってずつと避けてきた話題・・・。 そして慧は小学生の時、母方の祖母が住む歌志内市で暮らし始めた。 この街よりもずっと寂れた、お年寄りの多い静かな街。 そして、彼の出身校は・・・。 「南高の出身だったんだね。」 私の住む街の隣の市にある南高。 その高校には、私も何度か行った事がある。 女子の夏服である白襟のセーラー服に憧れていた。 そして、その学校には・・・。 「私の元彼も、南高だったんだー。」
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