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ためらいながらも伸ばした右手。
亜里の頬にかかりそうな髪をそっと後ろに払ってやる。
触れた瞬間、
亜里の身体がビクッと跳ねて、その小さな体を強張らせた。
ズキッと痛む胸の奥。
同時に、ダラリと落ちていく拓斗の腕。
やっぱり、こんなに近づいて…
俺は亜里をまた怖がらせている?
でも…
ほっとけないし…
泣いてる亜里をどうにかしてやりたい…
俺は…
どうしたらいい?
小さく息を吸って、
俺は心を落ち着けようとした。
部屋に響くのは亜里の嗚咽だけで…
俯き、顔を覆ってしまった亜里の表情は窺えない。
亜里……
俺はもう一度、亜里へと手を伸ばす。
どうか、俺を拒まないで…
そう切に願いながら……俺は、右手で亜里の後頭部に触れ優しく下へと撫でた。
亜里はもう一度肩を震わせたけれど、俺を拒みはしなかった。
漏れる嗚咽とともに、かすかに震えている。
亜里…
見たこともないくらい弱弱しい亜里に、
俺は胸が引き裂かれるような痛みを感じた。
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