第二章

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涙で潤んだその瞳は、見たことがないくらいに綺麗で… 拓斗は瞳の中に吸い込まれそうだった… 亜里… 声が出なかった… 亜里も何も言わずにただ、俺を見ている、 目が離せない… 2人の距離はほんのわずかで、お互いの吐息までわかりそうなくらい。 その近さに、 亜里は、だんだんと頬を染めていく… 心臓の鼓動が拓斗に聞こえてしまうかもしれない、 そう思ったら、 余計に恥ずかしくて、 顔が赤くなるのを止められない… 拓ちゃん… どうしてそんな切ない顔で私を見るの? 拓斗は亜里の泣き顔を見つめたまま、 ふと昔の事を思い出していた… 亜里が泣いたのを見たのは、いつが最後だった? 亜里はいつも泣き虫で…小さいころはよく泣いていた。 クラスの男子に些細なことで意地悪されて、泣いて… 俺が仕返しにいく事も多々あった。 もちろん、 俺と口げんかして泣くこともあった、 でも、やっぱり、俺が泣かすのと、 俺以外に泣かされるのとでは、 なんか気持ちが違くて… 泣いてる亜里を見るのが嫌で、 俺はそれが許せなくて、 いつしか、俺は亜里を守る側に立ってた… その行動は、 俺にとっては当たり前のことで… 亜里が好きとか、 幼馴染だからとか、 そういう理由からではなくて… なんていうか、 自然の流れで… うまく説明できないけれど・・・ もう、あの頃みたいな子供じゃない、 それだけはわかった… 亜里が一瞬睫を伏せると、新たな涙が一筋、頬をつたう… ギュッと締め付けられ様な胸の奥。 亜里… いつから、亜里はこんな綺麗な涙を流すようになったんだ? 大人になった亜里の泣き顔が、俺の理性を奪っていく。
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