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沙希ちゃんと目があって、私は思い出した。
『沙希ちゃん、購買にお気に入りのアイスなかったの?』
さっき買いに行くと言って、教室を出て行った沙希ちゃんの手の中は……空っぽだった。
あれ?
『売り切れだったの?』
小首を傾げた私に、
沙希ちゃんは、ヒートアップした。
『そうなのよっ!って、そんなことじゃなくってっ!!アイスは確かにもうなかったけど……今は、そんなんどうでもいいのっ!』
『えっ?違うの?』
あんなに、はりきって購買に行ったくせに?
『見たのよ!売店の裏の中庭のベンチにいるあいつを!』
『あいつ?』
『羽田くんに決まってるでしょっ!』
『あぁ、拓ちゃん……?』
無意識にトーンを落とした私。
釣られて眉尻も下がる。
羽田拓人 16歳
クラスは違うけれど、よく知っている人物。
小さい頃から、一緒に過ごした時間は果てしなく長い。
隣の家に住む、通称、拓ちゃん。
私の幼馴染である。
2人で過ごす時間は、
当たり前のように、ずっと続くと思っていた。
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