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『悪かったって、だから落ち着きなって』
しかしはやてはおさまるどころか更に勢いを増すばかり。
そして足が使えないにも関わらず朱莉の身体をよじ登って倒し馬乗りになると
『それも「冗談よ」で済まされたらたまったもんやないからなぁ。もうこの目で見んと信じられへん!』
『あ、あれ・・・?ハヤテ=サン?ちょっと何をする気ですか・・・?』
流石の朱莉・・・もとい雀も冷や汗をかきつつ素に戻りながら問いかける。
本当なら普通に引き剥がせることは出来るが生憎彼女は監視対象で病人である。下手に引き剥がして怪我したり最悪なことになってしまうとそれこそ本末転倒である。
よって今の雀には会話で片を付けるしかないのだ。
しかしその言葉が聞き入られることもなくはやては指をワキワキと動かしながら
『なぁに・・・ちょっとばかし確かめるだけや。朱「姉」なんか朱「兄」なんか』
と雀にだんだんと迫ってくる。
雀は尋常ではない汗を流しつつも
『待って、待った!怖いから!』
『大丈夫や・・・痛くせぇへんからなぁ・・・ちょっとばかし確かめるだけやって~』
と必死に抗議するがそれを聞くよう様子もなく雀にはやての魔の手が・・・
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《対象はどう?》
『寝ているわ・・・というより寝かしたわ』
ベッドの上でスヤスヤと寝息を立てて眠っているはやてを見ながら雀はアリアへと通信デバイスを使って答える。
あの後、襲われそうになった雀は咄嗟にスリプルの魔法を発動しはやてを眠らせた後、ベッドへと連れてきたのだ。
《眠らせた・・・?言っておくけど対象はしっかりと保護しなさいよ?じゃないと計画に支障が『わかってるわよ』ならいいけど》
アリアの言葉に雀はうざったそうに答えた後に気を取り直して報告する。
『とりあえず潜入は成功、対象とも上手く馴染めそうだわ。このまま任務を続行する』
《了解、しっかりお願いね》
そこで通信を終了させ、通信デバイスを閉じて後ろポケットにしまう。
そして眠っているはやての頭を優しく撫でる。
はやては気持ち良さそうな表情をしながらもぐっすりと寝ている。
『まさかまた、こんな事になるなんてね・・・』
雀は皮肉を込めて静かに呟いた。
何度も捨てた安らぎ、そして暖かさ・・・もう自分はそんな場所に居られないと思っていた矢先にこれだ。
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