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『~♪』
とある家庭のキッチン。そこで鼻歌を歌いながら料理をする少女がいた。
普通なら母親の手伝いだと大抵の人はそう考え、気にしないだろうが少女は普通の少女ではなかった。
年齢は9歳、しかしその手つきは最早慣れており、同じ年頃の女の子でもここまで出来る者はまずいない。
そしてその少女にはもう一つ、特徴的な物があった。
それは車椅子に乗っている事だ。
車椅子に乗っている少女が料理をしている時点で既におかしい。親は居ないのかと普通なら思うが彼女は幼い頃に両親を無くしそれからずっと1人で生活してきたのだ。
財産管理をしてくれている人は一応いるのだが実質、彼女は天涯孤独であった。
さて、そんな少女が何故鼻歌を歌い、上機嫌なのかというと
『今日来る住み込みのヘルパーさん、一体どんな人なんやろうなぁ・・・』
ということである。
なので何気に彼女が今作っている料理はどれも豪華だ。
『優しいお姉さんタイプやろか?それともキリッとしたかっこいいお兄さんタイプかもしれへんなぁ!』
彼女はニヤニヤしながら妄想にふける。
『お姉さんやったら一緒にお風呂入れたり一緒に寝たり出来るなぁ。お兄さんやったらきっと力持ちだったりするんやろか?んー!待ち遠しい!早くこぉへんかなぁ!?』
興奮して上を向いて叫ぶ少女。叔父さんや叔母さんという選択肢は無いのかと突っ込みたい想像だが、まぁそこは子供、多めに見るべきである。
そんなこんなで全ての料理を作り終わった少女は食卓へ料理を並べた後、車椅子から席に移り期待を胸に、体を揺らしながらヘルパーが来るのを待つ。
それから少し経ち・・・
ピンポーン!
と玄関のチャイムがなる。
『お!来たで来たで~♪どんな人なんやろうなぁ。ってしまった!席に座ってもうたからすぐに出迎ぇへん!』
少女はそう叫びつつも急いで車椅子に乗ると『はいはーい!今出ます!』と急いで玄関に行き鍵を開ける。
(ドキドキ・・・ドキドキ・・・)
少女にとっては緊張の一瞬である。
ドアをゆっくりと開けつつもしっかりとヘルパーさんの顔を見る為に目を光らせる。
そして出たのは・・・
『こんばんわ、そしてはじめまして。私、今日からヘルパーをさせていただきます・・・』
目の前の綺麗なブロンドの髪を伸ばした茶色の瞳の人物は懐から名刺を出し
『鈴戸 朱莉といいます。これからよろしくね、お嬢さん』
と微笑して名刺を渡すのであった。
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