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そして朱莉の動きが止まり数十秒。朱莉にじっと見られている桃子は笑顔のまま首を横に傾げて
『私の顔に何か?』
と問いかける。
漸く我に返った朱莉は何とか欺こうと
『別に、ただ貴女があんまりにも綺麗だったから見惚れちゃっただけよ(何言ってんの俺ェェェェェ!?)』
とクールな顔をして咄嗟に出た言葉が口説き文句で朱莉は更に内心テンパってしまう。
朱莉の言葉に桃子はクスクスと笑って
『ありがとうございます。貴女も充分綺麗ですよお姉さん♪』
と返した後に『ではごゆっくり』と笑顔で他のテーブルへと歩いていった。
困難は去った・・・そう思い安堵する朱莉だが次なる障害が目の前で既にスタンバっている事にまだ気づいていない。
『朱兄ぃあーゆーのが好みなん?』
『え?』
はやての妙に嫉妬の篭った声色に朱莉は聞き返しつつはやてを見るとジト目で朱莉を睨んでいた。
いや、はやてだけではない。ヴィータにシャマル、何故かシグナムまでもが先程までの行われていた談笑を辞めて朱莉をジト目でじーっと見ていた。
唯一ザフィーラだけが哀れな目で朱莉を見ている。
『朱兄ぃってあーゆーのが好みなん?』
『・・・あっ』
はやての2度目の問いに漸く気付いたのか朱莉は慌てて弁解を始める。
『落ち着きなさい!たかが褒め言葉でしょ?何をそんな『私、言ってもろうたことあらへん』は?』
朱莉の言葉を遮ってふくれっ面ではやてが呟き、他の面子もそれに続く。
『私とシグナムが抱きついても何も反応しなかったのは好みじゃなかったからなのかしらー?』
『主の目の前で何と無礼な!見損なったぞ』
『アタシ達よりあの店員の方がいいのかよ!?』
上からシャマル、シグナム、ヴィータの順番で朱莉へと失望の声が容赦無く降り注ぐ。
(くっ・・・!監視対象じゃなかったら今すぐにでも殴れるのに!)
朱莉は心の中でそう吐き捨てながらもこめかみに青筋を浮かべつつ笑顔で
『悪かったわよ。でも私もいきなり声をかけられたからびっくりしたのよ』
『びっくりしただけでそんなん口走るんかー』
不穏な空気に他の客が察したのかざわざわと騒ぎ始めそれが朱莉への追い打ちとなる。
本来、朱莉は目立つのは苦手なのだ。
それもこんな訳のわからない事で騒がれるなんてもっての他である。
更にここで騒いでしまうとなのはが現れかねない為余計にここで騒ぐ訳にはいかなかった。
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