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朱莉はその言葉を聞き驚くと思いきや、あまり表情に出さず頭をかくと
『いつから?』
『店に入って来た時からよ。始めは驚いちゃった。だって周りからは本当に綺麗なお姉さんにしか見えないんだもの』
と短く問いかける朱莉に対し桃子は笑顔のまま答え、その言葉に朱莉は内心驚いた。
まさかそんな前から気付いていたというのか。
途中、注文したパフェが自分の好みに合わせてカスタマイズされていた所で薄々感じてはいたが・・・。
朱莉は心の中でそう思うと同時に桃子に対する認識を改めつつ財布を取り出して中身を漁る。
『あれが雀の親戚?すごく楽しそうで私安心したわ』
まるで自分の事かのように喜びの表情を浮かべて言う桃子に朱莉は淡々と
『違うわ。今はただのヘルパーよ』
『あら、そうなの?』
と返し一万円札を差し出し桃子は少し寂しそうな顔を浮かべて一万円札を受け取り会計を進めていく。
『家に戻ってくるつもりはないの?皆これでも寂しがってるのよ?』
お釣りを渡しながら言う桃子に朱莉はお釣りを受け取った後に
『帰るつもりはない。・・・いや、もう帰れない。じゃあ、ごちそうさまでした』
と小さく返した後に財布を後ろのポケットにしまい店を出ようとするが
『帰れるわよ。例え雀の中身が変わっていたとしても、雀は今でも大事な息子なんだから』
その言葉に朱莉は振り向く。
その顔は酷く困惑し、同時に悲しい目をしていた。
『また、いつでも帰って来なさい。雀の好物いっぱい作って待ってるから』
朱莉はその言葉を聞き、再び出口の方へ向くと
『・・・なのはによろしく伝えといて下さい』
と言って桃子の返事を聞く前に店を足早に出て行った。
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『あ、朱兄ぃようやっと・・・って何かあったん?』
店から出てきた朱莉を見てはやては手を振りながら声をかけるがその表情を見るなり心配する。
『いや、何でも無いわ・・・』
朱莉は笑顔でそう言いつつはやて達の元へ歩み寄る。
すると不意にはやてが真剣な表情な声色で話出した。
『朱兄ぃ、今日楽しかった?』
『ん?』
はやての言葉の意図がわからずに朱莉は聞き返すが今日一日の心境を振り返る。
今日自分はどう思っていたのか?乗り気でなかったのは確かだ。
しかし実際にはどうだ?素の自分を曝け出して一緒に騒いでいたではないか。
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